尺側側副靭帯(UCL)再建術(トミージョン手術)後平均9.75ヶ月において選手は肘内側に痛みを経験するKeller 2018)。ブルペンでの投球開始後のことである(Camp 2021)。

ブルペンでの投球は50%から75%の球速制限が設けられているが,感覚的に投球すると制限速度を超えてしまう。たとえば健常な大学生と高校生の投手37 名にスピードガンで最高球速を測定し,自己意識下において最大球速の50%と75%を投げてもらうと、球速はスピードガンで測定したのより有意に速くなる。また投球側の肘にウェアラブル加速度センサー(Motus Global, Rockville Centre, NY, USA)を着用して外反トルクを測定すると、スピードガンでの投球に比べ自己意識下での投球は有意に外反トルクを高くする(Lizzio 2020)。このことからUCL再建術後7–9ヵ月のブルペンでの投球練習はスピードガンで球速を制限する必要がある

図の●は自己意識下で投げた球速。◯はスピードガンの制限で投げた球速。縦軸が最高球速からの割合(%)。横軸が目標下の最高球速の割合(%)。明らかに自己意識下での投球の方が速い。

図の●は自己意識下で投げた球速。◯はスピードガンの制限で投げた球速。縦軸が肘にかかる最大トルクの割合(%)。横軸が目標下の最高球速の割合(%)。明らかに自己意識下での投球の方がトルク値を上げる。

 

https://www.drivelinebaseball.com/product/pulse-throw/(Motus Global, Rockville Centre, NY, USA)

UCL(トミージョン)手術後18.5ヵ月ではイニング数、防御率、インニングの四球安打数(WHIP)を手術前・後と比較しても有意差はない。しかし投手は手術後18ヵ月においても100%の投球感覚はないDines 2007) 。

トミージョン手術を受けた投手は、前腕筋だけでなく腱板、肩甲骨周辺筋さらにキネティックリンクエクササイズを少なくとも完全復帰するまで行う必要がある。