アメリカ・カリフォルニア時間の2023年8月19日に大谷翔平選手は2回目の尺側側副靭帯(UCL)(内側側副靭帯)再建術を受けました。MLB投手の26%、4人に1人以上は通称トミー・ジョン術と呼ばれる肘のUCL再建術を受けています。また再々建術(2回目)の割合は手術を受けたMLB投手の6-7%と言われていますがそれでも年に何億、何十億を稼ぎ出す投手にとって極めて深刻な問題です。しかも再々建術を要する選手は最初の再建術から3.8年とあくまでも平均ですが判明しています。最初の一年をリカバリーの年として術後5シーズン以内に発生することになります。2018年10月に最初のUCL再建術を受けて2023年8月に再度損傷させた大谷選手はこの科学的エビデンスにまさに当てはまります。アメリカでは世界最高峰の投手のために10年以上に渡りMLB、マイナーリーグ全投手の投球肘の追跡システムを構築し、解剖学屍体を用いたラボ研究から臨床経験を経てインターナルブレイス修復術さらにハイブリッド術を生み出しました。

2011年メジャーベースボールリーグ(MLB)機構と選手会の合意により導入された健康・外傷障害追跡システム(Health, Injury Tracking System: HITS)に加え、2007年にMLBすべてのホーム球場にPTICHf/xシステムが導入され(2017年以降はStatcastシステムに変更)最高球速、球種が緻密にデータ化されました。この2つのシステムが尺側側副靭帯損傷、トミー・ジョン術の再建術に影響を与えることになりました。このことは2013年以降の関連論文出版数が顕著な増加であることからも明らかです。それに伴いUCL損傷箇所次第では重症度に関係なく保存治療が厳しいことも追究されました。マイナーリーグ(MiLB)とMLBの投手は年俸だけでなく契約形態も異なり、このことから復帰率は手術やリハビリテーション過程の違いでなくあくまでも選手の能力次第で決まります。3分の1のリカバリー期間で現場復帰できるインターナルブレイス(コラーゲンがコーティングされた人工靭帯)修復術は高校生投手に推奨されていますが、MiLB選手の選択でもあります。現在はトミー・ジョン術に加えハイブリッド術がMLB投手の主なUCL再建術になっています。最新ハイブリッド術の予後は今後の追跡システムで明らかになります。こうした現状を明らかにし再建術後の段階を踏んだリハビリテーション過程を説明します。

note:「MLBのトミー・ジョン術ー大谷選手の肘をエビデンスでひも解く

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