大谷選手
大谷翔平選手が19日現地時間に投球側の内側側副靭帯(UCL)手術を受け、翌日からメディアはこのことを取り上げました。術後に担当執刀医のDr. Neal ElAttracheは声明文を発表しました。その文から見えてくる内容を解説してみたいと思います。
“The ultimate plan after deliberation with Shohei, was to repair the issue at hand and to reinforce the healthy ligament in place while adding viable tissue for the longevity of the elbow.”
“was to repair the issue at hand”
これは、「目の前に置かれている(少々意訳)の問題を解決することだった。」”Repair”は医療の場合「修復」や「修復術」として使われていますが、一般には「直すこと」です。”the issue”は「問題」でこの場合大谷選手の肘の再損傷のことです。
“reinforce”は補強
”Reinforce”は補強することです。軍隊用語で兵、武器を補充(補強)することです。これを「強化」と訳すとニュアンスは変わります。
“the healthy ligament”
次に、”the healthy ligament”は健康な靭帯ですが、自家腱移植のことです。逆側の長掌筋腱か、大腿内側部の薄筋腱か、どこの腱を採取したのかわかりませんが、靭帯に置き換えたことです。腱と靭帯は同じ緻密性結合組織です。採取した腱をグラフト(移植)用の靭帯に整えたので、”the healthy ligament”と説明されたと思います。
“adding vaibale tissue”
“adding viable tissue”はインターナルブレスのことです。残念ながらインターナルブレスは日本の医療では認可されていません。ちなみにアメリカでは、スカラシップで進学希望する高校生や大学生あるいはマイナーリーグの投手に使われています。その他のオーバーヘッド選手にも採用されています。しかしメジャーリーグの投手にはこれまで採用していません。(下記のインターナルブレスのデモンストレーションビデオをご参考にしてください。)
“in place”
最後に”in place”は適切なところ、つまり傷んだ前斜走靭帯があるところにと言う意味です。前斜走靭帯は投球で痛める肘の靭帯のことです。
Procedure
声明文からだと今回の大谷選手が受けた術法(Procedure)は、ハイブリッド術だったと確信します。最初に自家腱を移植し(トミージョン術)その後にインターナルブレスで補強した形です。Dr. ElAttracheはそのように説明していました。前田健太選手もこのハイブリッド術を受けています。ですので新しい術法でなく、MLBの投手にはハイブリット術が行われる傾向です。
インターナルブレス修復術
インターナルブレスは人工靭帯に加え、縫合用の糸が2つ出ています。損傷あるいは部分断裂した靭帯を修復するためにです。もともとインターナルブレスは修復術になります。縫合だけでは術後の成績が良くなく、結果的に人工靭帯で補うようになったのです。ビデオで見てわかる通りに簡単な修復術ですし、補強(人工靭帯)が加わったことでが術後の成績は良好です。しかしMLBの投手にはインターナルブレスだけでは微妙なことが推察できると思います。
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