肩関節と投球動作

身体の中で最も可動域のある肩はさまざまな運動を可能にしています。スポーツもその一つで特に投球やテニス、バトミントンのサーブ、バ`レーボールのアタックなどがそうです。

習慣性スポーツ活動は目的の運動に合わせて肩周辺の筋肉も発達させます。運動「スキル」が上達すれば最小限の筋力で運動の最大効果を発揮することができます。

運動学習

スキルを習得するには反復練習でフォームを確立することになります。特に投球やサーブのフォームは「クローズド・スキル」と呼ばれ、試合中であっても自らが開始する運動になります。サッカーやバスケットボールなど相手の動作による反応が前提の「オープン・スキル」と違い、クローズド・スキルは正確性、スピードを高めるための練習になります。

フォームを固めるためには部分トレーニング「分習法」や器具で類似の練習も行うことになりますが、トレーニングはあくまでも種目に沿った「特異性」になります。そして最終的には試合形式の練習が必要になります。さまざまな環境下の試合で習得したパフォーマンスの正確性やスピードを発揮するためには「失敗から学ぶ」経験が必要になるからです。

腱板/関節唇損傷

フォーム習得までの「反復練習」はその質を追求するがゆえに腱板と呼ばれる肩関節周辺筋を損傷させることになります。スキル習得後の効率良い筋肉の働きは逆に関節包や関節唇と呼ばれる肩関節内の結合組織を損傷させることになります。この場合の損傷は「症状としての痛みがでる」こともあれば「関節自体が適応する」こともあります。

特別なトレーニング

腱板や関節唇の損傷をできる限り避けるための予防を「特別なトレーニング」と呼び、チューブやミニメディシンボール、リストカフなどリハビリテーションに使う器具を使い、肩関節から肩甲骨周辺筋つまり投球やサーブに関係する筋肉を鍛え、肩を痛めないようにする必要があります。

関節弛緩の問題

個人によって異なるのですが「関節弛緩の問題」もあります。どの関節も弛緩はあるのですが、特に肩関節は「ゴルフのティ」に「ゴルフボール」が乗った球関節でありそれが大きいです。

肩関節の弛緩が比較的に大きい選手は早い段階で肩に慢性痛を発生させるかもしれません。そうでない選手もスキル向上に伴いやはり慢性痛を発生させることになります。特に肩関節前方不安定性を示す選手は肩を痛めやすくなります。慢性痛を避けるためにより多くの「特別なトレーニング」が求められます。

肩関節の評価

肩関節の評価は「機能」になり、つまり個人の運動(目的)が達成できるかになります。その機能にあった関節可動域を獲得することになります。ゆえに肩関節に限っての評価は「関節の安定性」でなく個人の機能評価になります。

投球やサーブなどのスキルは地面反力からの力、エネルギーを下肢から体幹、肩甲骨を通じてボールやラケットを握っている手に伝えることができるか、キネティックリンクの効率になります。しかし肩の痛みとなれば肩甲骨の動き、肩関節の可動域の改善がまず求められます。

肩甲骨の動き

肩甲骨は、前傾/後傾、外転/内転、内旋/外旋、上方・下方回旋と呼ばれる8つの動きが腕の動きに合わせて起こります。肩甲骨の適切な動きが起きなければ肩関節を痛めることになります。特別なトレーニングは肩甲骨の動きを最大かつ最適に引き出す運動になります。

投球障害肩予防トレーニングの研究は興味深く、この10年間積極的に取り組みエビデンスに基づいたエクササイズを確立しています。その結果、投球動作に必要な腱板の筋力も向上することがわかってきました。